アダルトチルドレンとは。生きづらさの根を、育った家庭から見つめなおす
執筆 kokoro編集部・kokoro-link.com 編集部
理由のわからない生きづらさを抱えたまま、大人になった方もいるかもしれません。人に気をつかいすぎて疲れる、NOが言えない、親しい人ほど見捨てられるのが怖い。その一つひとつは、性格の問題に見えて、子どもの頃を過ごした家庭と、静かにつながっていることがあります。
理由のわからない生きづらさを抱えたまま、大人になった方もいるのではないでしょうか。人に気をつかいすぎて、一緒にいるだけで疲れてしまう。頼まれごとを断れない。親しくなった相手ほど、いつか見捨てられるのではないかと不安になる。
その一つひとつは、自分の性格の問題のように見えるかもしれません。けれど、いくつも重なっているとしたら、子どもの頃を過ごした家庭と、静かにつながっていることがあります。
この記事では、アダルトチルドレンという言葉が指すもの、共通する特徴とその背景、そして回復に向けてできることまでを、一緒に整理していきます。
アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレンは、医学的な診断名ではありません。子どもの頃に安心できる家庭で育たなかった経験が、大人になった今の生きづらさに影響していることがあります。その影響を、自分で理解するための言葉です。
アダルトチルドレン(Adult Children、略してAC)は、もともとアルコール依存症の親のもとで育った人を指す言葉でした。アメリカの自助グループから生まれた考え方で、日本でも当事者の自助グループであるACAなどが知られています。
その後、この言葉が指す範囲は広がっていきます。お酒の問題に限らず、親の不仲、暴力、過干渉、感情的な放置なども含むようになりました。子どもが安心して過ごせなかった家庭を、心理学では機能不全家族と呼びます。親の都合が優先され、子どもが子どもらしくいられなかった家庭、という意味です。
ここで大切なのは、アダルトチルドレンが診断名ではない、ということです。病院で「あなたはアダルトチルドレンです」と診断されるものではありません。
では、診断名でないなら軽いものなのかというと、そうではありません。例えば、人の機嫌に敏感で、その場の空気を読みすぎてしまう。相手がどう感じるかを先に考えて、自分の意見をうまく言えない。楽しいはずの場でも、どこか気を抜けない。そんな自分に、思い当たることはないでしょうか。こうした感じ方は、性格の弱さではなく、安心できない家庭の中で身につけた、生き延びるための工夫であることが少なくありません。
診断のつく言葉ではありません。それでも、自分の感じ方がどこから来ているのかを知る手がかりとして、役に立つ言葉です。
アダルトチルドレンに共通する特徴
アダルトチルドレンには、いくつか共通して語られる特徴があります。生まれ持った性格というより、安心できない環境を生き抜くために身についた、感じ方のクセに近いものです。
よく挙げられるのは、次のようなものです。
- 自分に自信が持てず、ほめられても素直に受け取れない
- 人からの評価が、必要以上に気になる
- 完璧にやらないと、落ち着かない
- 頼まれると断れず、NOが言えない
- 親しい人ほど、見捨てられるのではと不安になる
- 自分が今、何を感じているのかよくわからない
- 心から楽しんではいけない気がする
例えば、職場で同僚が不機嫌だと、自分が何かしたのではないかと一日中気になってしまう人がいます。家では相手の予定に合わせすぎて、自分が何をしたいのか見えなくなる人もいます。どれも、安全を確かめながら生きてきた名残です。
こうした傾向は、アルコール依存症の親をもつ人の特徴を整理した研究や、アダルトチルドレンのトラウマ症状を扱ったPsychology Todayの記事でも、繰り返し指摘されてきました。気を張りつめた状態が続き、感情を抑え込みやすい、という共通点があります。
ただ、すべてが当てはまる必要はありません。いくつか心当たりがあるなら、自分を知るための手がかりとして読んでみてください。
これらは、弱さの証拠ではなく、安心できない環境の中で自分を守るために身につけた工夫だったのかもしれません。そう考えると、見え方が少し変わってきます。
家族の中で、子どもはどんな「役割」を担うのか
安心できない家庭では、子どもは知らないうちに、ある役割を引き受けることがあります。家族のバランスを保つために、自分の気持ちを抑えて振る舞うのです。その役割が、大人になっても抜けないことがあります。これが、いわゆるアダルトチルドレンと呼ばれる生きづらさの、ひとつの形です。
例えば、しっかり者を演じて家族の期待を一身に背負う子。問題児としてふるまい、家族の不満を引き受ける子。存在感を消して、手のかからない子でいようとする子。おどけて場を和ませ、緊張をやわらげようとする子。これらの役割は、機能不全家族を扱った論考でも整理されてきました。
それぞれの役割は、機能不全家族の中で子どもが担う6つの役割を一つずつ整理した記事で詳しく見ています。自分はどれに近かったかを振り返ると、今の生きづらさの形が、少し見えてくるかもしれません。
どの役割にも共通しているのは、本当の気持ちを後回しにして、家族のために動いてきた、ということです。そして、その役割は、家庭を出たあとも、職場や友人関係でくり返されることがあります。その健気さは、責められるものではありません。
なぜ、その生きづらさが続くのか
子どもの頃にくり返し感じた緊張や不安は、性格として残るのではありません。神経系、つまり身体が危険を察知する仕組みに、反応のクセとして刻まれます。だから大人になっても、頭で考えるより先に、身体が反応してしまうことがあるのです。
例えば、誰かの大きな声や不機嫌な表情に、必要以上にびくっとしてしまう。それは、気にしすぎではありません。危険を早く察知する力が、子どもの頃に強く育っただけです。
つらい経験は、思い出としてだけでなく、身体の反応として残ります。長く続いたストレスは、身体の防御システムに負担をかけます。その影響が大人になってからの不調につながることは、ストレスが身体に残す影響を扱った研究でも示されています。逆境的小児期体験(ACE)と呼ばれる大規模な調査では、つらい経験が4つ以上重なった人は、大人になってからうつや依存などを抱えるリスクが何倍にも高くなると報告されています。つまり、当時の身体の反応が、今も残って働いている、ということです。
そして、これは特別な人だけのものではありません。アメリカの調査では、高校生の5人に1人が、4つ以上のつらい経験をしていたと報告されています。安心して過ごせない家庭は、思っているよりずっと身近にあります。
背景には、愛着という仕組みもあります。心理学では、幼い頃に親との間で育つ安心感のパターンを愛着と呼びます。これは、その後の人との関わり方のもとになると考えられています。安心できる愛着が育ちにくかった場合、大人になってからも、人との距離の取り方に影響が残ることが、愛着と対人関係を調べた研究で示されています。
ただ、育った家庭が、すべてを決めるわけではありません。つらい家庭で育っても、どこかに安心できる関係が一つでもあれば、それが心の支えになります。これは、依存症の親をもつ子どもを対象にした研究でも示されています。もし今、心や身体に具体的な症状が出ているなら、心と身体が出す限界のサインを整理した記事も、状態を見立てる助けになるかもしれません。
生きづらさには、たどれる理由があります。その理由がわかることが、回復に向けた最初の手がかりです。
「親のせいにするのは甘え」なのでしょうか
「親のせいにするなんて、甘えだ」。そう感じて、立ち止まってしまう方は少なくありません。けれど、起きたことを事実として知ることと、親を責めることは、別のことです。
「親のせい」と「親子関係の影響」は、同じではありません。過去に何があったかを知るのは、誰かを責めるためでも、親と縁を切るためでもありません。今の自分の感じ方がどこから来ているのかを、知るためのものです。事実を見ることは、誰かを裁くこととは違います。
例えば、つらいことがあっても「私のはまだ軽いほうだから」と感じてしまう方がいます。子どもの頃から、自分の気持ちを後回しにすることが、当たり前だったのかもしれません。あるいは、職場で限界が近いのに「弱音を吐いたら終わりだ」と感じて、誰にも言えない方もいます。「弱いところを見せたら、見放される」。その感覚もまた、子どもの頃に身についたものであることがあります。
どちらの場面にも、共通するものがあります。自分の気持ちより、相手や状況を優先することが、生きるための前提になっていたことです。それは、子どもの頃には必要な力でした。ただ、大人になった今は、その前提を少しずつ見直していけます。
「なぜ自分は、こんなに弱音を見せられないのか」。その問いには、弱音を見せられないまま消耗していく構造を扱った記事でも触れました。仕事の場面で起きていることの根が、家庭にあることは、珍しくありません。
過去に向き合うことは、つらい作業です。目を背けているほうが、ずっと楽かもしれません。それでも、向き合おうとすること自体が回復の入り口になると、家庭の影響を扱った専門家の記事でも書かれています。つらいほうを選ぼうとしているのですから、それは甘えではありません。安心して人に頼ることを、まだ覚えられていないだけなのです。
自分を責めてきた時間が長いほど、この区別はむずかしく感じるかもしれません。それでも、事実を知ることと自分を責めることは違うのだと、少しずつ感じられたらいいなと思います。
アダルトチルドレンと、毒親・複雑性PTSD・HSPの違い
アダルトチルドレンは、似た言葉と混同されやすい言葉です。それぞれが何を指しているのかを分けて整理すると、自分の状態が見えやすくなります。
まず、毒親との違いです。毒親は、親のほうを主語にした言葉です。アダルトチルドレンは、その家庭で育った自分のほうを理解するための言葉です。視点が、親に向くか、自分に向くかが違います。
次に、複雑性PTSDです。これは、長く続いた虐待やDVなどをきっかけに起こる、医学的な診断名です。フラッシュバックや強い感情の波などがあり、専門的な治療の対象です。自己理解のための言葉であるアダルトチルドレンとは、性質が異なります。
HSPとの違いも、よく問われます。HSPは、生まれ持った感受性の高さ、つまり気質を指す言葉です。育った環境の影響を指すアダルトチルドレンとは、出発点が違います。ただ、両方が重なっている人もいます。生まれ持った繊細さについては、HSPの疲れやすさを扱った記事も参考になるかもしれません。
言葉の違いは、優劣ではありません。どれが今の自分にいちばんしっくりくるか。それを選ぶための、手がかりです。
回復に向けて、いまの自分にできること
回復とは、親を許すことでも、縁を切ることでもありません。自分の感じ方のクセに気づき、少しずつ選び直していくことです。一度で終わるものではなく、行きつ戻りつしながら進みます。
進み方には、ゆるやかな段階があります。
- 気づく:自分の感じ方が、育った家庭とつながっているかもしれない、と知ること
- 言葉にする:抑えてきた気持ちを、少しずつ口に出してみること
- 試す:安心できる関係の中で、新しい関わり方を練習すること
- 頼る:必要であれば、専門家の力を借りること
気持ちを言葉にするのは、最初は難しく感じるかもしれません。日記に一行だけ書いてみる、信頼できる人に話してみる、カウンセリングで一緒に整理する。やり方は人それぞれで、決まった正解はありません。
希望のある話もあります。子どもの頃の影響は、固定したものではありません。近年の研究では、安全な関係や適切な支援によって、その影響が和らいでいく可能性が示されています。実際に、つらい記憶を扱う心理療法で回復していく人もいます。
今日から、何か大きなことを始める必要はありません。「これは自分の性格のせいだと思っていたけれど、もしかしたら違うのかもしれない」。そう感じられたなら、それがもう、最初の一歩です。
アダルトチルドレンは、自分を責めるための言葉ではありません。これまでの自分を理解し、これからを選び直すための、出発点です。
急がなくていい。その一歩は、今日からでも、踏み出せます。
Frequently Asked
よくある質問
アダルトチルドレンは病気ですか?診断してもらえますか?
アダルトチルドレンは医学的な診断名ではありません。もともとアルコール依存症の親のもとで育った人を指す、自助グループ由来の言葉で、後に機能不全家族で育った人全般に広がりました。そのため、病院で「アダルトチルドレン」と診断されることはありません。ただし、背景にうつや複雑性PTSDなどがある場合は、それらは医療の対象になります。気になる症状が強いときは、自己理解だけで抱えず、専門機関に相談してください。
アダルトチルドレンは治りますか?回復にどのくらいかかりますか?
「治る・治らない」というより、「影響が和らいでいく」と考えるほうが実際に近いものです。子どもの頃の経験による影響は固定したものではなく、安全な人間関係や適切な支援の中で軽くなっていくことが研究で示されています。回復にかかる時間は人それぞれで、決まった期間はありません。自分の感じ方に気づくことから始まり、行きつ戻りつしながら進んでいきます。
自分がアダルトチルドレンかどうか、どうすれば分かりますか?
チェックリストの点数で決まるものではありません。アダルトチルドレンは診断ではなく、自分を理解するための言葉だからです。自己肯定感の低さ、見捨てられ不安、NOが言えない、自分の感情がわからないといった傾向にいくつか心当たりがあり、それが育った家庭とつながっていそうだと感じるなら、自分を知る手がかりになります。「あなたはACだ」と決めつける情報には、距離を置いて構いません。
親が依存症でなくても、アダルトチルドレンになりますか?
はい。もともとはアルコール依存症の親をもつ人を指す言葉でしたが、今では機能不全家族で育った人全般を含むようになっています。親の不仲、暴力、過干渉、感情的な放置など、子どもが安心して過ごせなかった家庭であれば、お酒の問題がなくても当てはまることがあります。大切なのは、その家庭で自分が安心していられたかどうかです。
アダルトチルドレンと複雑性PTSDや愛着障害は、どう違いますか?
アダルトチルドレンは、自分の状態を理解するための言葉で、診断名ではありません。一方、複雑性PTSDは、長く続いた虐待やDVなどをきっかけに起こる医学的な診断名で、専門的な治療の対象になります。愛着に関する考え方は、幼い頃に育つ安心感のパターンと、その後の人間関係への影響を説明するものです。フラッシュバックや解離などの症状が強い場合は、自己理解だけで抱えず、医療機関への相談をおすすめします。
一人で回復できますか?それともカウンセリングが必要ですか?
「これは自分の性格のせいだと思っていたけれど、違うのかもしれない」と気づくことは、一人でも始められます。本やこうした記事を読むことも、その一歩です。ただ、アダルトチルドレンの生きづらさは、人との関係の中で身についたものが多いため、回復もまた、安心できる関係の中で進みやすいものです。一人で抱えきれないと感じたら、専門家に頼ることは弱さではありません。必要なときに頼れることそのものが、回復の一部です。
References
参考文献
Colophon / 執筆と監修
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心理学の知見を、読む人の日常に近い言葉に翻訳して届けるチームです。記事は公認心理師・臨床心理士の監修のもとで制作していきます。
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