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自分を知る

自己肯定感が低い原因とは。育ちと経験から考える

執筆 kokoro編集部・kokoro-link.com 編集部

「どうせ私なんて」と、つい口をついて出る。人とくらべては落ち込み、ほめられても素直に受け取れない。自己肯定感の低さを、自分の性格や弱さのせいだと感じている方も、いるのではないでしょうか。自己肯定感の低さには実は、気質・育った環境・積み重なった経験が絡み合っています。原因をほどきながら、今からできることまでを一緒に考えます。

ほめられても、「いやいや、そんなことないです」とすぐに打ち消してしまう。何かがうまくいっても、「たまたま運がよかっただけ」と思う。人と自分をくらべて、自分だけが一歩も二歩も遅れている気がする。あるいは、どれだけがんばっても「まだ足りない」と感じて、なかなか自分を休ませてあげられない。

そんな感覚に、心当たりがある方も、いるのではないでしょうか。

自己肯定感が低い。その状態を、自分の性格や弱さのせいだと感じている方は、少なくありません。でも、低さの背景には、いくつかの理由があります。この記事では、自己肯定感が低くなる原因を、気質・育ち・経験という三つの面から整理し、今からでも変えられる可能性があるのかということについて一緒に考えていきます。

自己肯定感とは何か

自己肯定感とは、「自分には価値がある」「自分は自分のままでいい」と感じられる感覚のことです。テストでいい点を取れる、仕事ができるといった、能力への自信とは少し違います。大切なのは、これが「できる・できない」の評価ではなく、「自分はここにいていい」という感覚だということです。

厚生労働省の働く人向けサイト「こころの耳」のメンタルヘルス関係用語解説では、セルフエスティーム(自己肯定感、あるいは自尊感情)を「自分自身を価値あるものとして尊重する感覚」と説明しています。心理学では、ローゼンバーグという研究者がつくった尺度で、長く測られてきました。

よく似た言葉に「自己効力感」がありますが、こちらは「自分なら期待に応えられる」という、課題に向けた自信を指します。つまり、仕事の成果を出せる人でも、ありのままの自分を受け入れる感覚は、別に育つということです。まわりからの評価は高いのに、ほめられても素直に喜べない。そんな状態は、めずらしくありません。

自己肯定感が低い人の特徴

自己肯定感が低いとき、こんな反応が出やすいと言われています。当てはまるものがあるか、見てみてください。

  • 何かを決めるとき、自分の気持ちより、人の顔色を先に気にしてしまう
  • 断るのが苦手で、つい引き受けては抱え込む
  • 「迷惑をかけてはいけない」と思って、人に頼れない
  • うまくいっても「たまたま」、うまくいかないと「やっぱり自分のせい」と考える
  • 自分の意見に自信が持てず、言葉にする前にのみこんでしまう
  • 人からどう思われているかが、いつも気になる

いくつも思い当たって、少しつらくなった方も、いるかもしれません。これらは、あなたの性格そのものではありません。

自己肯定感が低いことを、自分だけの問題のように感じてしまうかもしれません。でも、日本人を対象にした研究では、自尊感情は10代の頃にもっとも低く、その後、大人になるにつれて少しずつ高まっていくことが報告されています(Ogihara & Kusumi, 2020)。国どうしを比べたこども家庭庁の調査でも、日本の若い世代は「自分自身に満足している」と答える割合が、ほかの国より低めだと示されています。

「どうせ私なんて」は、どこから来るのか

自己肯定感の低さには、たった一つの原因があるわけではありません。生まれ持った気質、育ってきた環境、そして積み重なってきた経験。この三つが重なり合って、少しずつ形づくられていきます。

大きく分けると、背景には次の三つがあります。

  • 生まれ持った気質:刺激や人の気持ちを感じ取りやすいなど、もって生まれた感じ方のクセ
  • 育った環境:家庭のなかで、どんな言葉をかけられ、どんなふうに受け止められてきたか
  • 積み重なった経験:学校や仕事で、くらべられたり、うまくいかなかったりした経験のかさなり

どれか一つだけのせいではありません。むしろ、いくつかが重なっているほうが、ふつうです。三つのうち、自分に当てはまりそうなものは、あるでしょうか。一つずつ、順番に見ていきましょう。

生まれ持った気質

一つめの背景は、生まれ持った気質です。同じ出来事でも、深く受け取る人もいれば、さらりと流せる人もいます。この感じ方の違いは、自己肯定感の育ち方にも関わってきます。

人の表情や、その場の空気を、人一倍感じ取りやすい人がいます。感じ取りやすいぶん、ちょっとした否定的な反応も、強く受け止めてしまいがちです。子どもの頃に「気にしすぎ」「繊細すぎる」と言われた経験が重なると、「自分はどこかおかしいのかもしれない」という感覚につながることがあります。

こうした敏感さは、生まれ持った特性であって、直すべき欠点ではありません。刺激を強く受け取りやすい気質については、刺激を求めるのに疲れやすい気質についての記事で、別に詳しく書きました。

気質そのものに、よい悪いはありません。自分の感じ方のクセを知っておくと、必要以上に自分を責めずにすみます。

育った環境

二つめの背景は、育った環境です。育った家庭は、自己肯定感に大きく影響します。ただ、この話をすると、「結局、親のせいにしているだけではないか」と感じる方もいます。でも、「親のせい」と「親子関係の影響」は、別のものです。

子どもは、親からどんな言葉をかけられ、どんなときに受け入れてもらえたかを通して、「自分は大切にされる存在だ」という感覚を育てていきます。心理学では、これを愛着と呼びます。親が完璧かどうかは、関係ありません。たとえば、できたときだけほめられ、できないと関心を向けられない。そんな経験がくりかえされると、「ありのままの自分には価値がない」「何かを成しとげないと愛されない」という感覚が、少しずつ身についていきます。

大学生を対象にした研究でも、子どもの頃の愛着のスタイルが、大人になってからの自己意識や、他人の評価への敏感さと関わっていることが示されています。愛着という考え方は、もともとボウルビィという研究者が示したもので、人生の早い時期に築かれる人間関係が、その後の自分の感じ方に長く影響していくという見方です。

大切なのは、原因を知ることと、親を責めることは、まったく別だということです。過去にどんな経験があったのかを見るのは、犯人さがしのためではありません。今の自分の感じ方が、どこから来ているのかを知るためです。事実を知ることは、誰かを責めることでも、家族との関係を絶つことでもありません。

「自分の生きづらさは、育った家庭と関係があるのだろうか」。そう感じた方に向けては、アダルトチルドレンという視点から書いた記事があります。

過去は、変えられません。けれど、その意味は、これから変えていけます。

積み重なった経験

三つめの背景は、積み重なってきた経験です。「もっとできるはず」と自分を追い立て、達成しても、ほっとできない。すぐに次の不安がやってくる。これは、あなたの心が弱いせいではありません。学校や仕事でくりかえされた経験のなかで身についた、心のクセであることが多いのです。

何をやってもうまくいかない。そんな状況が長く続くと、人は「自分が何をしても、どうせ変わらない」と感じるようになります。心理学では、これを学習性無力感と呼びます。アメリカの心理学者セリグマンが示した考え方です。やる気が出ないのは、なまけているからではなく、「やっても無駄だ」と学んでしまった状態だと考えられています。

人とくらべるクセも、自己肯定感を下げていきます。とくにSNSでは、みんなの良いところばかりが目に入ります。自分の足りないところと、人のいちばん良いところをくらべるのは、できあがった料理と、自分の下ごしらえをくらべるようなものです。本当は条件が違うのに、自分だけが劣っているように見えてしまう。そして、その「自分はだめだ」という印象を何度もくりかえすうちに、ありのままの自分を認めにくくなっていきます。

そして、自己肯定感が低い人ほど、がんばりすぎてしまうことがあります。「このままの自分では認めてもらえない」という感覚があると、休むことに罪悪感をおぼえ、無理を重ねてしまうからです。ここで一度、自分の働き方のほうに目を向けたくなった方もいるかもしれません。そのときは、がんばり続けて消耗してしまう仕組みについての記事が、助けになるかもしれません。

がんばれてしまうのは、力がある証拠でもあります。その力を、自分を責める方向にばかり使わなくてもいいはずです。

大人になってからでも、変えられるのか

ここまで読んで、「もう大人だから、手遅れなのでは」と感じた方もいるかもしれません。そんなことはありません。自己肯定感は、いくつになっても育て直していけるものです。

先ほどの日本人を対象にした研究でも、自尊感情は10代で底を打ったあと、20代、30代と年齢を重ねるなかで、ゆっくり高まっていくことが分かっています。低い状態は、ずっと変わらない性質ではなく、これから動いていくものなのです。

子どもの頃に身についた感覚は、すぐには消えません。でも、新しい経験を重ねることで、少しずつ上書きされていきます。たとえば、あなたの話をさえぎらずに聞いてくれる人と過ごす時間。失敗しても、それで関係が終わらないと分かる経験。安心できる人間関係のなかで、ありのままの自分を受け入れてもらう。小さな「できた」を、自分で認めていく。そうした積み重ねが、感覚を変えていきます。

具体的な進め方は、また別の機会に、ていねいに扱います。ここでは、「変えられる」という事実だけ、覚えておいてもらえたらと思います。敏感さからくる疲れやすさのほうが気になってきた方は、HSPの疲れやすさと回復法をまとめた記事に戻ってみてください。

低さは、生まれつき決まった性質ではありません。今日からでも、育て直していけるものです。

今日からできる、小さな見直し

とはいえ、いきなり「自分を好きになろう」とするのは、なかなか難しいものです。大きく変えようとしなくて、大丈夫です。今日からできる、小さな見直しから始めてみてください。

たとえば、こんな見直しがあります。

  • 自分への言葉を、一つだけ言いかえる:「また失敗した」を「ここまではできた」に。完璧でなくていいので、一つだけ
  • できたことを、小さく数える:朝起きられた、ごはんを食べた。当たり前に見えることも、ちゃんと「できたこと」です
  • くらべる相手を、過去の自分にする:人とではなく、昨日や去年の自分と

うまくできない日があっても、責めなくて大丈夫です。自己肯定感は、一日で変わるものではありません。少しずつで、いいのです。

それでも、「自分には価値がない」という感覚がつらくて、毎日が苦しいと感じるときは、どうか一人で抱え込まないでください。心理の専門家に話してみることも、回復に向けた一つの道です。話すことは、弱さではありません。

自己肯定感が低いのは、あなたが悪いからではありません。生まれ持った気質や、育った環境や、これまでの経験のなかで、そう感じるようになっただけです。

その感覚は、これから少しずつ、ほどいていけます。急がなくて、大丈夫。今日の小さな一つから、始めてみてください。

Frequently Asked

よくある質問

  • 自己肯定感が低いのは親のせいですか?

    「親のせい」と考えると、苦しくなってしまう方が多いかもしれません。育った家庭は、自己肯定感に確かに影響します。子どもの頃に、できたときだけ認められる、気持ちを受け止めてもらえないといった経験が重なると、「ありのままの自分には価値がない」という感覚が身につきやすくなります。ただ、これは親を責めるための話ではありません。原因を知ることと、誰かを責めることは別のものです。今の自分の感じ方がどこから来ているのかを理解することが、これからを変える一歩になります。

  • 自己肯定感と自尊心(自尊感情)はどう違いますか?

    自己肯定感は、自尊感情とほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。厚生労働省の「こころの耳」では、自分自身を価値あるものとして尊重する感覚と説明されています。よく混同される「自己効力感」は、これとは別のもので、「自分なら期待に応えられる」という、課題に対する自信を指します。成果を出す自信(自己効力感)があっても、ありのままの自分を受け入れる感覚(自己肯定感)は別に育つ、と考えると分かりやすいかもしれません。

  • 自己肯定感が低いと、どんなことに困りやすいですか?

    人によってさまざまですが、よく見られるのは、人の評価が気になりすぎる、断るのが苦手で抱え込みやすい、人とくらべて落ち込みやすい、といったパターンです。また、「このままの自分では認めてもらえない」という感覚から、休むことに罪悪感をおぼえ、がんばりすぎて消耗してしまうこともあります。どれも性格の問題ではなく、自己肯定感の低さからくる、自然な反応だと考えられています。

  • 大人になってからでも自己肯定感は上げられますか?

    上げていけます。日本人を対象にした研究では、自尊感情は10代でもっとも低く、その後、大人になるにつれて少しずつ高まっていくことが分かっています。子どもの頃に身についた感覚はすぐには消えませんが、安心できる人間関係のなかでありのままの自分を受け入れてもらったり、小さな「できた」を自分で認めていったりする経験を重ねることで、ゆっくり変わっていきます。一日で変わるものではないので、焦らなくて大丈夫です。

  • HSPだと自己肯定感が低くなりやすいのはなぜですか?

    HSPは、刺激や人の気持ちを感じ取りやすい、生まれ持った気質のことです。感じ取りやすいぶん、ちょっとした否定的な反応も強く受け止めがちです。子どもの頃に「気にしすぎ」「繊細すぎる」と言われた経験が重なると、「自分はおかしいのかもしれない」という感覚につながり、自己肯定感が下がりやすくなることがあります。気質そのものは、直すべき欠点ではありません。自分の感じ方のクセを知ることが、楽になる入り口になります。

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心理学の知見を、読む人の日常に近い言葉に翻訳して届けるチームです。記事は公認心理師・臨床心理士の監修のもとで制作していきます。

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