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自分を知る

HSS型HSPとは。刺激を求めるのに疲れやすい、二面性の正体

執筆 kokoro編集部・kokoro-link.com 編集部

楽しいことには真っ先に飛びつくのに、終わったあとは何日も動けない。明るくふるまえるのに、家に帰ると糸が切れたように消耗している。HSS型HSPは、その「アクセルとブレーキ」を同時に持つ気質です。新しい刺激を求める気質と、それを深く受け取る気質。二つが同居する感覚を、編集部と一緒にほどいていきます。

友人と過ごした、楽しい一日。次の日になると、ベッドから起き上がれない。

飲み会の場では明るく話せたのに、家に帰った瞬間、糸が切れたように消耗している。新しい仕事や習い事に真っ先に飛びついてしまうのに、しばらくすると続かない自分に、また落ち込む。誘われたら断れずに出かけるのに、終わったあと数日、誰にも会いたくなくなる。

周りからは「行動的でアクティブ」に見られるのに、心の中では「また続かなかった」「なぜ自分はこんなに疲れるのか」と、ぐるぐる考えてしまう。そんな「外向きの自分」と「内側で消耗する自分」を、行き来している方も、いるのではないでしょうか。

HSS型HSPは、その二つを併せ持つ気質のことです。この記事では、HSS型HSPとはどんな気質か、なぜアクセルとブレーキが同居するのか、そして疲れすぎる前にできる工夫までを、一緒に整理していきます。

HSS型HSPとは

HSS型HSPは、医学的な診断名ではありません。新しい刺激を求める気質と、刺激を深く受け取る気質。その二つを併せ持つ人を理解するための言葉です。

もともとは、二つの別々の概念でした。心理学者エレイン・アーロン博士が提唱したHSPは、音や光、人の感情などの刺激を深く受け取りやすい人のこと。一方、マーヴィン・ザッカーマン博士が研究したHSSは、新しいものや未経験の出来事を求めずにはいられない人のこと。本来、両者は別の研究で生まれた、別の特性として扱われてきました。ところが、HSPの中にも、刺激を求めずにはいられない人が、一定数いる。その重なりを持つ人を指すのが、HSS型HSPです。アーロン博士は、HSPのおよそ3割がHSS型ではないかと推計しています。

HSPは、英語で Highly Sensitive Person。日本語では「とても感受性の強い人」と訳されます。アーロン博士は、その特徴をDOESという4つの頭文字で整理しました。

  • Depth of processing:物事を深く、丁寧に処理する
  • Overstimulation:刺激に圧倒されやすい
  • Emotional reactivity and empathy:感情の反応が強く、共感しやすい
  • Sensory sensitivity:感覚が鋭い

一方、HSS(高刺激追求性)は、新しいものや、未経験の出来事を求める動機の強さを指します。本来、HSPとは別の文脈で生まれた言葉でした。そのうち、アーロン博士本人が、HSPの中にもこの刺激追求性を併せ持つ人がいることを認め、HSS用の専用テストを公開しました。

つまり、外に出て新しいものを求めずにはいられないのに、それを受け取って深く動いてしまう。そんな「重なり」を持っている人を指す言葉が、HSS型HSPです。

さらに、もう一つお伝えしたいことがあります。ヨーロッパの研究グループによる感覚処理感受性のレビュー(Greven et al., 2019)では、HSPは病気や障害ではなく、人類が長い時間をかけて受け継いできた、生まれつきの特性として位置づけられています。つまり、直すべきものでも、克服すべきものでもありません。「自分はどこかおかしいのではないか」と感じてきた方は、ここで一度、その問いを下ろしても、いいのかもしれません。

では、同じ人の中で「新しい刺激を求める」気質と「刺激に疲れやすい」気質が、なぜ両立するのでしょうか。その背景には、神経の仕組みが関わっています。

なぜアクセルとブレーキが同居するのか

一見、アクセルとブレーキが同居するのは、矛盾のように感じられるかもしれません。しかし、神経の仕組みとしては、両方が同時に成り立つことが、近年の研究でわかってきています。

アチェベドらのfMRI研究(2014)では、HSPの人の脳を測ると、刺激を深く処理する島皮質や体性感覚皮質、共感に関わる前頭前皮質が活性化しやすいことが報告されています。ひとつの出来事を、文字どおり深いところまで運んで処理している、ということです。だから、ひとつの出来事の余韻が、長く残ります。

HSS型HSPは、ここに「新しい刺激を求める動機」が重なります。アクセルを踏みたがる回路と、深く処理する回路が、同じ人の中で同時に動いています。だから、楽しい予定を立てる段階では、勢いよく前に出る。ところが終わったあとは、その何倍もの時間をかけて感覚を消化する必要が出てきます。「楽しかったのに、なぜこんなに疲れているのか」「家に帰った瞬間、糸が切れたように動けなくなる」。そうした戸惑いは、ここから生まれるものです。

この状態は、燃え尽き症候群と混同されることもあります。けれど、二つは別物です。燃え尽きは、長く続いた仕事のストレスが蓄積して起きる「状態」です。HSS型HSPは、生まれつき持っている「気質」。気質に合わない働き方が続けば、状態としての燃え尽きにつながることはあります。ただ、気質そのものを病気とは呼びません。

気質と状態は、別のものです。この二つを分けて見られると、「また自分はダメだ」と決めつけてしまう場面が、少し減っていくかもしれません。

HSPとHSE、HSS型HSPの違いとは

「外向的に見えるのに、人と過ごすと疲れる」「初対面の人とすぐ仲良くなれるのに、その後の関係は長く続かない」。そんな自分を説明しようとするとき、いくつかの似た言葉に出会います。混同しやすいので、ここで一度整理しておきます。

  • HSP(高感受性)は、音や光、人の感情などを深く受け取りやすい人を指す言葉です。アーロン博士のDOESにあてはまる人、という言い方もされます。成人人口の約 15~20%と推計されています。
  • HSE(外向型HSP)は、HSPの中でも、人と過ごすのが好きで、社交的にふるまえる人を指します。他者との関わりからエネルギーを受け取りやすいものの、入ってくる刺激は多く、結果的に疲れやすい。アーロン博士は、HSPのうち約 3割がHSEだと推計しています。
  • HSS型HSPは、HSPの中でも、新しいものや未経験の出来事を求めてしまう動機(HSS)が強い人です。旅行や初めての場所、見たことのないものに惹かれ、飛びついてしまう。こちらもHSPの約 3割と推計されています。

HSEとHSS型HSPは、似ているようで、実は別物です。HSEは「人と一緒にいるのが好き」という対人の傾向、HSS型HSPは「新しいもの・場所・経験を求める」という動機の方向。両方が重なっている人もいますし、人と過ごすのは苦手だけれど新しいことには惹かれる、というHSS型の人もいます。

「普通のHSPテストを受けたら、自分には当てはまらなかった」という方も、いるかもしれません。アーロン博士のHSPテストは、もともと内向的に行動する人を想定して作られたところがあります。HSS型は刺激を求めて外に出ていくぶん、表面上は「過敏に見えない」。だから、点数が低めに出ることがあります。

そのときは、HSS用のテストも試してみるといいかもしれません。両方を併せて見ることで、自分の気質が立体的に見えてきます。Greven らのレビューでも、感受性は内向 / 外向の軸とは独立した次元として扱われています。外向か内向かで決まる話ではない、ということです。

HSS型HSPに共通して語られる、ふるまい

HSS型HSPには、いくつか共通して語られるふるまいがあります。診断を下すためのものではなく、自分の状態を知るための手がかりとして、読んでみてください。

アーロン博士のHSSテストを参考に、よく語られる項目を、日常の言葉でご紹介します。

  • 知らない街を歩いたり、初めての店に入ったりするのが好き
  • 同じ場所、同じ仕事、同じ毎日が続くと、気が滅入る
  • 旅行は決められたコースより、現地で予定を決めるほうがわくわくする
  • 危険を伴うスポーツや活動に、惹かれることがある
  • 周りからは「行動的」「アクティブ」と言われることが多い
  • けれど、刺激の強い一日のあとは、何日も人に会いたくなくなる
  • 楽しい予定を入れた直後に、もう疲れている自分にも気づく

前半 5 つに心当たりがある方は、HSSの傾向が強いのかもしれません。それに加えて、人と会った翌日に動けないような疲れやすさを抱えているなら、HSS型HSPの可能性があるかもしれません。

もちろん、これは確定診断ではありません。すべてが当てはまる必要もありません。いくつか心当たりがあったなら、自分のふるまいの背景を知るための、手がかりとして読んでみてください。

疲れすぎる前に、いまの自分にできること

「また同じパターンで疲れた」「楽しかったはずなのに、なぜか自分にがっかりする」。そう感じる回数を、少しずつでも減らしていけたら、と思います。HSS型HSPは、楽しい予定を入れる段階で、ブレーキが効きにくくなります。終わったあとに深く疲れるのは、そのせいです。だから、予定が終わったあとに整えるよりも、入れる前に余白を作っておくほうが、ずっと楽になります。

いまの自分にできることは、いくつかあります。

  • 楽しい予定と、回復時間をセットで入れる:休日に外出を入れるなら、翌日は何も予定を入れない。これを「セット」として最初から組んでおくのが、いちばん再現しやすい工夫です。アチェベドらのレビュー(2018)でも、深い情報処理には時間とエネルギーがかかると報告されています。
  • 飛びつく前に、24時間置く:新しい誘いを受けたとき、即答せずに「明日返事します」と言える小さなルールを、作っておく。アクセル側に、意図的な「間」を入れるためのものです。
  • 二面性を、近しい人に伝える言葉を持っておく:「楽しんでいるように見えるかもしれないけれど、終わったあと数日は静かにしていたい」。こう伝えられる言葉を、一つでも持っておくと、当日の無理が減ります。

説明しないまま消耗してしまうと、相手にも「急に冷たくなった」と感じさせてしまうことがあります。気質を言葉にしておくことは、関係を守ることにもつながります。

もし、こうした工夫を続けても消耗が止まらず、働きながら限界が近いと感じる時間が増えてきたなら、それはHSS型HSPという気質だけでは説明しきれない、心や身体の不調が始まっているサインかもしれません。一度、専門家と一緒に整理してみるのも、一つの選択肢です。

「やりたいのに続かない」自分を、責めなくていい

最後に、もう一つだけお伝えさせてください。

HSS型HSPの「飛びつくけれど続かない」というパターンを、意志の弱さだと感じている方がいます。新しい習い事を始めて、しばらくすると気持ちが冷める。転職を本気で考えていたのに、いざ動こうとすると気力がなくなる。「やりたいって言ったのは自分なのに、また続かなかった」「他の人は普通に続けているのに、自分だけダメだ」。こうした自己嫌悪のループは、本当にしんどいものです。

けれど、神経の側から見ると、これは意志の問題ではありません。深く処理する分、新しい刺激の代謝に時間がかかります。回復が追いつかないままアクセルを踏み続ければ、誰でも止まってしまうものです。気質は、頑張りで上書きできるものではありません。

「続かない自分」を責める癖は、生まれつきのものではありません。子どもの頃に、「やると言ったらやり通しなさい」「飽きっぽいのは良くない」と何度も言われた記憶がある方も、いるかもしれません。家庭の中で身についた「自分への声のかけ方」は、大人になっても残ることがあります。

これは「親のせい」という話とは違います。過去にあったことを知るのは、誰かを責めるためでも、家族との関係を絶つためでもありません。今の自分が、自分にどう声をかけているかを知るためのものです。家庭の中で身についた自己評価のクセと、その背景については、アダルトチルドレンを扱った記事でも触れています。

自分の気質を、変える必要はありません。配分を、少しずつ変えていけばいい。それだけで、暮らしやすさはずいぶん変わってきます。

急がなくていい。今日のところは、明日の予定を一つ減らしてみる。それくらいから、始めてみてください。

Frequently Asked

よくある質問

  • HSS型HSPは病気ですか?

    いいえ、病気ではなく気質のひとつです。ICD-11やDSM-5などの診断分類には含まれていません。Greven 2019らの神経科学レビューでも、感覚処理感受性は遺伝的・進化的に保存された特性として位置づけられています。ただし、生きづらさが強く、不眠や気分の落ち込みが続く場合は、別に身体や心の不調が重なっている可能性があるので、一度医療機関に相談する選択肢を持っておくと安心です。

  • HSPテストで当てはまらなかったけれど、HSS型HSPの可能性はありますか?

    あります。一般的なHSPセルフテストは、内向的に行動する人を念頭に作られているため、外向的に見える行動を取りやすいHSS型HSPは、得点が低めに出ることがあります。アーロン博士のサイトには、HSS用の別テストが用意されています。両方を試してみることで、自分の気質の手触りが見えやすくなります。

  • 外向型HSP(HSE)とHSS型HSPは同じですか?

    似ていますが、別の概念です。HSEは「外向的に振る舞うHSP」、HSS型HSPは「新しい刺激を求めるHSP」。重なる人もいますし、外向的ではないHSS型HSPもいます。「人と会うのが好き」と「新しい場所・経験を求める」は、別の動機です。

  • HSS型HSPの自分とうまく付き合うには、何から始めたらいいですか?

    まずは「予定の前後に、回復時間をセットで入れる」ことから始めるのがおすすめです。HSS型HSPは、楽しい予定を入れる段階でブレーキが効きにくく、終わったあとに深く疲れます。事後の回復だけでは追いつかないので、入れる段階で余白を確保するのが、再現しやすい工夫です。

  • HSS型HSPと燃え尽き症候群、適応障害の違いは何ですか?

    HSS型HSPは「気質」、燃え尽き症候群と適応障害は「状態」です。HSS型HSPの人が、長期間にわたって自分の気質に合わない働き方を続けると、燃え尽きや適応障害を発症することはあります。気質と状態を区別したうえで、もし強い不調が続いているなら、状態のほうを専門家と整理していく順序になります。

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